ポケットの恋
こんなに声が聞こえちゃうなんて反則だ。
古谷が奥の自習室に入って、適当な席についたのを見届けると、幸日は棚のかげに隠れてしゃがみ込んだ。
扉のすぐ近くの棚の前にたっていた幸日には、南部達が話していたことがしっかり聞こえてしまった。
あの流れは多分、絶対、告白だと思う。
南部さんに話しかけてた人、知ってる。
確かこの大学の準ミスだ。
あんな綺麗な人に告白されたら誰だって。
気がついたら、もう二人の後を追うという選択肢しか残ってなかった。
万一古谷に気づかれないように、幸日は急いで二人の後を追った。

階段をおりきって、辺りを見回すと、建物のかげに二人を見つけた。
あたし、最低。盗み聞きなんか絶対駄目なのに。
そう思いながらも、幸日は二人の声が聞こえる範囲に、身をひそめた。
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