ポケットの恋
「それで、話って?」
「あのね…ちょっと聞きたいっていうか」
「何?」
「秋仁君、最近一年の戸田さんと仲良いみたいだけど…」
突然、思いも寄らないような名前が飛び出て来て、南部は「は?」とほうけた声をあげた。
仲が良い、と言われても、大学の敷地内では会った時に軽く会釈を交わす程度で、そもそもそう頻繁にあうわけでもない。
連絡をとるのは、家に帰ってからメールか電話だ。
そんな状態でよく、そもそも幸日ちゃんと知り合いであるとわかったな、と南部は少し驚いた。
南部が考えていることがわかったのか、もじもじと縮こまっていた宮川は、慌てたように弁解をし始めた。
「あっ…何て言うか、秋仁君と戸田さんが一緒に買い物してるの見たって友達が教えてくれて、ほら公園の近くの…それで、ちょっと気になったんだけど、あの…二人つきあってたりとか、してるの?」
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