ポケットの恋
そこからどこをどう走ったのか覚えていない。
気付けば、自分のマンションの前にいた。
「あれ…そんなつもりじゃ…なかったんだけど…」
思わず一人でに声が漏れた。
多分このドキドキは、走って来て息があがってるからじゃない。
…南部さんは、なんて答えたの。そればかりがぐるぐると頭の中を回転した。
機械的に階段を駆け上がって、部屋の鍵を開ける。
「―…ばっかみたい」
幸日はベッドに倒れ込んでぼそりと呟いた。