ポケットの恋
「ごめん」
「秋仁君が私のこと好きじゃないのはわかってるの。話したこととか、あんまなかったし…。だけど、付き合ってる子いないなら、試しでいいから、駄目?付き合ってみて、やっぱり駄目って思ったら、きっぱりふってくれていいから!だから…」
この流れで、受け入れた事もあった。
だが、今は条件が違う。
「ごめん」
南部はきっぱりと言った。
「付き合ってる人いないけど、好きな子いるから」
その言葉で宮川は軽く俯いた。
そしてゆっくりと顔を上げる。
「それって…やっぱり戸田さん?」
尋ねているという口振りだったが声は確信に満ちていた。
南部は小さく顔をしかめる。
そんなに自分はわかりやすいのだろうか。
軽い溜め息を吐き出す。
どう答えるかと逡巡し出した時に、後ろから思いきり衿を引かれた。
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