ポケットの恋
「で?秋田!俺らも交換しなきゃだね?」
いきなり声を掛けられた真実は目に見えて硬直する。
そして次の瞬間露骨に嫌そうな顔をした。
「うっわ!何その目」
古谷は大袈裟なポーズで後ずさるふりをする。
あきらかにおちょくられている感が余計にいらついた。
「何であんたとアドレス交換しなきゃなんないわけ」
「なんで君はそんなに俺のことが嫌いなんですか」
「理由なんていくらでもあるでしょ!」
真実が吐き捨てるように言った後に、古谷はふと真面目な顔付きになった。
「…そういえば俺、電話番号はもう知ってるんだった」
「は!?」
「リダイアル機能、戸田の携帯」南部と幸日の話を聞いていれば察しはつく。
こいつ、ちゃっかりひかえやがったな。
そう思ったのはおそらく二人。
真実と南部だ。
「はぁ…」
真実が思い切りため息をつく。
「逆に聞くけどさあ?あたしのアドレスなんか控えて古谷に良いことあるわけ?」
「んー?真実ちゃんとまた遊べる」語尾には、見えないがしっかり付いていた。浮かれた色をした八分音符が。
「キモい!」
真実はばっさり切り捨てると同時に古谷の頭をはたいた。
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