ポケットの恋
「あっれー?良行じゃん」
「……どーも」
古谷が無表情に真実の向こうに答えた。
真実は声に聞き覚えが無くて振り返る。
その瞬間、自分でも自分がどんな表情をしたかわかった。
「ぉわ!え?まみちゃん?」
二度と思い出したくなかった三人がそこにいた。
目の前のことが処理できないから時間が止まって欲しいのに、現実はそう甘くなかった。
無情にも彼らは喋り続ける。
「えー?!あの時の泣き虫まみちゃん?」
古谷に始めに声を掛けたであろう男が言った。
答えてもいないのに横の二人が爆笑する。
「だよな?!ぅっわー育ってる…っつか何?なんでここに一緒にいんの!?あ、もしかして、良行まみちゃんと付き合ってる訳?」
下卑た表情は男達の程度の低さを露呈させていた。
何年たっても、変わらないのかこいつらは。
硬直する頭で考えられたのはそれだけだ。
「そうかそうかー。真実ちゃん昔っから古谷の後ついてまわってたもんなー。いいんじゃね?お似合いじゃねーの」
古谷も真実も何も言わないのを良いことに、彼らはさらに言葉を重ねてきた。
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