ポケットの恋
後には明日美と古谷、そして居心地の悪そうな三人が残される。
明日美に、古谷は小さく頭を下げた。
既に暗記したコーヒーの代金を机に置く。
「ご馳走様でした」
明日美に言うと、三人が動揺したように顔を見合わせた。
「おい!良行?」
その声は無視する。
大股に歩いて行くと店を出た。
呼び止める声も無視して、古谷は早足で店から離れる。
彼らは当然のように追ってきた。
「良行!なんだよ、怒ってんの?」
肩を強くつかまれて、古谷はやっと足を止めた。
「からかったの怒ってんのかよ」「別に」
冷たく突き放しても、空気を読まない彼らは古谷の正面にまわる。
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