ポケットの恋
明日美が真実を追ってキッチンに入ると、真実は放心したような顔で座り込んでいた。
「真実ちゃん?」
明日美が声をかけると、真実は驚いたように肩を飛び上がらせる。
「どうしたの、真実ちゃん。らしくないじゃない」
明日美の言葉に、真実は顔を伏せた。
「ごめんなさい…」
やっとでてきた言葉はそれだった。
「今日はもうあがってもいいよ。どうする?」
明日美に優しく聞かれて、真実はこくりと頷いた。
「…甘えさせてもらっても、いいですか?」
「ただいま。」
もうこれは真実の癖になっている。だから誰もいない部屋に言う。無意識に靴を脱いで、手を洗って、うがいをして、鞄を置いて、部屋着に着替えて、洗濯物を洗濯機にほおりこんで、洗濯機を回して…ようやくベットに倒れ込んだ。しばらく放心状態だった。
何も考えたくなくて、枕に顔を埋める。
同時に化粧を落としていなかった事を思い出した。
頭の中でさーっと何かが流れて行って慌てて顔を上げると、やっぱり枕は汚れている。
「あーあ」
小さな声で言った。