ポケットの恋
それと同時に、小さな怒りが込み上げてくる。
泣き虫なんて、あまりにもひどい。
確かに泣かないわけじゃないけど、言われるほど泣き虫じゃない、と自分では思っている。
あの一番でっかいやつが、いつも良行のまわりにいるやつだ。
酷いこと言うくせに、絶対良行から離れない。
そして、そのでっかいやつが、おいうちをかけるように声を張り上げた。
「どうせお前泣き虫のこと好きなんだろ」
「だからやめろ。泣き虫っての」これは良行の声だ。うんざりしたようにため息をまぜている。
「好きなんだろ!お前キモいぞ。ロリコンじゃねーか」
ばっと良行の顔が赤くなったのが見えた。
「は!?」
「まじかよ!ロリコンかよ!」
不意に違う声がまじって、すぐに一緒になった。
「ローリーコン!ローリーコン!ローリーコン!」
「やめろ!」
「好きなんだろ!早く大好きな真実ちゃんとこ行け、ロリコン!」
ロリコンがなんだか知らないけど、良行をいじめないで。
真実が意を決したのと、古谷が声を張り上げたのは同時だった。

「あんな泣き虫好きじゃねーよ!!」

大きく踏み出した足は、止める術もなくサッシを踏んだ。
大きな音が教室中に響いた。
< 188 / 341 >

この作品をシェア

pagetop