ポケットの恋
「よし君…!」
縋るように抱き着くと、古谷はあっという間に状況を察したようで。
あえて大きく張り上げた声で幸日を宥めた。
とっくに追い付いてくるであろう足音が、いつのまにか消えている。
「いなくなった…」声に出すと同時に力が抜けた。
へたりこみそうになった体を、古谷が慌てて支える。
「ごめんねよし君…」
震える声で謝ると、少し上の方で何言ってるのと古谷が笑った。




「とりあえず、秋田と秋仁呼ぼう」
古谷の言葉に思わず固まった。
目の前にコーヒーの入ったマグカップが置かれる。
「あ…ありがとう…」
反射で言うと、どういたしましてと茶化したような声が返ってきた。
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