ポケットの恋
「なんで?」
「…心配かけるの嫌で…」
小さい声で言うと、古谷は思い切り破顔した。
「なんだ、そういうこと?」
そう言って幸日の頭に手を載せる。そのまま自然な流れで幸日の頭を撫でた。
「秋田に言わない方が秋田は勝手に心配するよ?第一、秋仁は戸田の心配なんて、権利買ってでもしたいと思う。」
その言葉に、自分でもわかる位に赤くなる。
「俺じゃ戸田安心させてあげられないし」
秋仁に抱きしめてもらったりした方が安心するでしょ?
そんなことないと言おうとしたのは古谷が何気なく続けた言葉で出せなくなった。
「よ…よし君!」
思わず睨むと古谷は涼しい顔で微笑んだ。
「とりあえずコーヒー、飲んでよ。砂糖とミルク、いる?」
尋ねられて反射でいると答えてしまう。
それで気勢を削がれて黙り込んだ。
番号を画面に呼び出すと、古谷に見せる。
同時に「あ」と古谷が声をあげた。「いいや。よければ戸田が電話してくれる?」
「へ…」
ぽかんとして見つめると、古谷は頭をかいた。
「自分で言っといてごめん…何て言うか、多分秋田は戸田が呼んだ方が来るでしょ」
腑に落ちない気もしたがとりあえず頷く。
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