ポケットの恋
「あたっ…当たり前です。出てって下さい…!人呼びます!」
ぎゅうっと目をつむった幸日を後ろに庇って、男を睨みながら、あぁ、ヤバイかもと思った時、バン、と荒い音を立てて、扉が開いた。
男の肩越しに扉のほうを見ると、店員の男性が立っていた。
目に見えて、男達が硬直する。
「お客様、失礼ですがこのお部屋の正式なお客様ですか?」
落ち着いた声。
口調は丁寧でも、空気が確実に威圧感を放っていた。
「そうだけど?」
店員に気をとられた隙に、幸日は別の男に捕まっていた。
「幸日!」
思わず声をあげる。
「俺らは楽しく遊んでたんだよなー?ユキヒちゃん」
幸日を後ろから抱き込んでいる男が言いながら幸日の頬をつついた。
幸日が捕まっている以上下手な真似は打てない。
自分のふがいなさに歯噛みする。
店員だって一応は店の客なんだからどうにもできないだろうし…そう思ったのとほぼ同時だった。
「失礼します」と声がして、気づいたら目の前の男が倒れていた。幸日を捕まえていた男も倒れている。
幸日は?と思って、慌てて目を走らせると、店員の腕の中にいた。
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