ポケットの恋

静かに冷たい表情で、古谷は口を開く。
「秋田がよくても俺達にとっては良くないから。戸田をいざっていう時に守るの、秋田じゃ無理だよ。相手男なんだから。秋田だけで戸田守るって言うのが逆に迷惑だって気付かない？」
真実が目を見開いた。
南部が驚いたように古谷の肩を掴む。
古谷は無表情に真実の腕を離した。
真実は力を失った腕と同じように俯く。
「真実ちゃん…」
幸日が小さく名前を呼んだ。
「…ごめんね、幸日、あたし現実見えて無かったかも。そういえばあたし、朝も夕方もバイト入れてるから考えてみれば送り迎えなんか無理に決まってんじゃんね」
そう言って顔を上げると無理に作ったように微笑んだ。
その表情に幸日が小さく息を飲む。
「勝手でごめんね」
「違うよっ」
咄嗟に幸日は叫んだ。
真実のあんな顔、今まで見たことがあっただろうか。
やっぱりあたしは、皆に心配かけてる。