ポケットの恋
でもそれを言うのも変な気がして「次は勝ちますよ」と笑った。
「お?言うね?」
南部が俺も負けないと続ける。
「最初の講義どこ?」
「あ…一棟です」
「じゃあ反対だ。送ってく」
さらりと言われて、うっかり頷きそうになった。
「だっ大丈夫です!」
「遠慮しない」
南部は柔らかく言うと歩き出した。
「あ…」
慌てて後を追う。
振り返った南部が笑った。
その笑顔は反則だ。
陳腐な言葉だけど、まるで魔法のような。自分ばかり焦ってる気がして、面白くない。
「…南部さんのばか。」
呟くと、いつの間にか横に並んでいた南部が驚いたような顔をした。
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