ポケットの恋
「お互いそんな様なこと考えてんのねー」
古谷が間延びした声で呟く。
「でもさ、よかったんじゃない?」
「はぁ?」
「だってそれは、戸田が秋仁のこと意識してるってことだもん。マジで好きになるのも時間の問題じゃない?」
「……そういうことに、なるのか?」
「うんなるなるー」
気楽な請け負いに、信じかけた心がぐらつく。
でも、そう考えたくなるのが恋という物か。
「どっちにしろ悪い方向じゃない気がするけどねー?俺は」
そう言って、ようやく古谷は自分の昼食に手を付けた。
「あぁ…そういや食ってなかったじゃんおまえ。ごめん」
何の気無しに声をかけると古谷が顔を上げてニヤッとした。
「な…なんだよ」
思わず身を引く。
「秋仁、そういうの嫌味なく言えちゃうとこ」
「は」
「よっ色男っ」
「はぁっ?!」
それからいくら尋ねても古谷はそれ以上のことは言わなかった。
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