ポケットの恋


なんだかんだ言って、午後は気持ちが軽くなった。
古谷には感謝するべきだな、と考えながら、南部は廊下の壁に寄り掛かる。
南部はもう全ての授業を終えたが、幸日からのメールはまだ来ていない。
まだ後に授業を入れているのかもしれないが…―
心配になるから聞いておくんだった。
そわそわしながら、携帯を開いたり閉じたりしていると、ふと声がかかった。
「南部さん?」
はっとして見ると、真実が廊下の端から近づいてくるところだった。
「あぁ、秋田さん」
「どうしたんですか?…あ、幸日待ち?」
「そう。まだ授業あるのかな」
苦笑しながら尋ねる。
「あの子言ってなかったんですか?…ったく…。今まだ授業うけてるとこです。でもこれで最後だから」
すぐ終わると思います、とため息混じりに真実が言った。
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