ポケットの恋
「そっか。じゃあ待ってればメールくるね。ありがとう」
「いえいえ…ちょっといいですか?」
南部の言葉に手を振ってから、真実は首を傾げる。
「ああ…どうかした?」
尋ねながら隣に来るよう促した。
真実は頭を下げて横に並ぶ。
少ししてから、小さな声で切り出した。
「幸日のことなんですけど…ていうかストーカーの…朝、誰か付けてきてたりしました?」
気忙しげな声に、申し訳なく思いながら南部は首を振った。
「多分そういうのは無かったと思う」
「そうですか…」
真実は案の定首を落とした。
「犯人…誰なんだろう」
呟かれた声に南部も頷く。
「どういう経緯で幸日ちゃんを知ったのかとか気になるね」
「大学関係者とかだったら最悪。学校来るのも危ないし」
それはキツイね、と南部が言いかけると、真実は携帯を見て「あっ」と声をあげた。
「ごめんなさい、今日バイトだから…早く行かないと!」
「あぁ。ごめんね、引き止めて」
「いえ、こちらこそ!じゃあ失礼します。幸日のことお願いします!」
真実は最後に大きく頭を下げて、走って階段を下りて行った。
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