ポケットの恋
そのままぼんやり立ち尽くしながら、南部は考える。
犯人は誰なんだろうか。
メールの内容は多岐に渡っていると聞いた。
家の中にいなければわかりえないことまで。
「あ…そうか…」
不意に思い付いて、南部は慌てて真実の後を追った。
「秋田さん!」
「あ…どうしたんですか?」
まだ玄関にいた真実が、驚いたような声で振り向いた。
「忙しいとこごめん」
軽く乱れた呼吸を整えながら切り出す。
「ストーカーのメールの内容って、家の中にいなきゃわかんないようなことまで触れてるんだよね?」
真実が首肯する。
「勝手に家に盗聴器仕掛けるとか都会じゃ珍しくないみたいですし」
続けられた言葉に南部も意表をつかれた。
ならば、と、より一層この提案が通って欲しいと思う。
< 226 / 341 >

この作品をシェア

pagetop