ポケットの恋
真実は遅れることなくついていく。
しばらく経った時、幸日が声を出した。
「真実ちゃんは…すきな人いないの?」
「は」
「好きな人!っていうか気になる人?いないの?」
茶化されたのが悔しかったのか、幸日は逆にさぐりを入れてきた。「…どうだかねぇ」
「え!いるの!?」
「いない」
「いないの!?」
どっちならよかったのかと突っ込みたくなる反応だ。
「いない」
繰り返して言う。
もとより、友達同士で恋の話題に花をさかすようなたちではないので、何となく気恥ずかしくなってきた。
それがばれないように、自然に口数が少なくなってしまうようだ。
「そっかー…」
追及が緩みほっとした瞬間、幸日の次の言葉に硬直した。
「あたしはてっきりよし君が好きなんだと思ってた」
「…………は?」
軋んだ音がする位、ゆっくりと幸日の方を向く。
足は完全に止まっていた。
幸日もそれに合わせるように立ち止まる。
「だって真実ちゃんよし君と仲良いし…」
言い終わらない内に幸日の口の両端を思いっきり引っ張り上げた。「いひゃっ…はひちゃんいひゃい!」
「くだらないことほざくのはこの口か?この口か?ん?」
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