ポケットの恋

幸日が慌てたように目元を擦った。
「ど…どうかした？幸日ちゃん」「あ…最近ダメですねあたし…涙腺弱くなっちゃってて…みんな優しいのに甘えすぎっ…」
そう言って、幸日は何度も目を擦る。
その幸日を南部が愛おしげに見つめていることに、幸日は気づいていなかった。




「よっ！幸日っ」
「ま…まみちゃ…」
画面の中で満面の笑顔の真実に、思わず幸日は脱力した。
とりあえず玄関のオートロックを解除する。
「どうも」
にこにこしながら真実が言って、フロントのドアをくぐるのがモニターごしに見えた。
しばらくして、玄関のチャイムが押される。
勿論真実だ。
急いでドアを開けると、真実は大荷物で満面の笑みだった。
「い…いらっしゃい」
「今日からよろしく」
普段の真実には似つかわしくないテンションで、そのまま部屋に上がり込む。