ポケットの恋


母親の入院する病院に泊まった一週間後。
真実はいつも通り、早朝からのコンビニのバイトに出た。
その時間に入っているのは真実ともう一人のバイトだけだ。
そのもう一人のバイトが朝から体調を崩したらしく、その日のバイトは真実一人だった。
早朝なので、コンビニに立ち寄る人も少ない。
それなりに暇なのに給料だけ貰えて、なかなか役得だと思う。
ぼうっとそんなことを考えていたら、大きく、来客を告げるベルがなった。
「いらっしゃいませー」
言いながら、軽く視線を客に移す。
あっ、と思わず声をあげてしまったのは店内に入ってきたのが南部だったからだ。
南部も、当然のように真実に気づいた。
「秋田さん」
「どうも…」
気まずくなりながら、軽く頭を下げる。
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