ポケットの恋
「え…?」
なんですか、と聞き返す前に彼女は声を張り上げた。
「…――意味わかんない!!」
「え…」
「なんで良行はあんたみたいな女のこと好きなのよ!」
古谷の名前が出てきた途端、頭をガツンと殴られたような気がした。
「あんたみたいな身の程知らずが良行と仲良くなろうとかするから、あたしが良行にフラれるんでしょ!?しゃしゃり出てこないでよ!!」
意味わかんないのはこっちの方だ。
あたしと古谷は何の関係もない。あんたみたい人間に、何か言われる筋合いもない。
そう言い返そうとしても、口はなかなか言うことを聞かなかい。
代わりに、耐え兼ねたような南部が、彼女の肩を掴んだ。
「由利ちゃん、言いすぎ」
どうやら知り合いらしい南部が、きつい口調で由利に言った。
由利は一瞬はっとしたように南部を見たが、すぐに開き直った表情になって、再び真実を睨み付ける。
< 261 / 341 >

この作品をシェア

pagetop