ポケットの恋
途端に真実は、勢いよく顔を上げる。
驚いた表情の南部と目があって、慌ててまた頭を下げた。
「彼女…いたんですか」
続いて呟かれた言葉に、南部が軽く頷く。
「元、だけどね。今はいないと思うよ」
その言葉へのこたえは無かった。
「427円です」
代わりに、レジの液晶に出ている金額が、真実の口からも知らされる。
頷いて500円を出すと、500円玉は真実の手に渡る前にカウンターに落ちた。
静かな中に、硬貨の跳ねる音はやたらに大きい。
しばらく二人は、無言で500円玉を見詰めた。
「あ…ごめんなさい」
しばらくして動いたのは真実で、500円玉を取る指先を南部は無言で見つめる。
真実の手は、見間違いでなければ震えていた。
「大丈夫…?」
お釣りを手渡してくる真実に尋ねると、真実は一瞬きょとんとした顔をして、「何がですか?」と笑顔になった。
南部は何も言えなくなって、ビニール袋を持つ。
「じゃ」
軽く会釈して背中を向け、店を出ようとした時、後ろから声がかかった。
「古谷には…言わないで下さい」思わず振り返る。
真実はどこか泣きそうな顔をしていた。
その表情で出かかった言葉が出なくなる。
驚いた表情の南部と目があって、慌ててまた頭を下げた。
「彼女…いたんですか」
続いて呟かれた言葉に、南部が軽く頷く。
「元、だけどね。今はいないと思うよ」
その言葉へのこたえは無かった。
「427円です」
代わりに、レジの液晶に出ている金額が、真実の口からも知らされる。
頷いて500円を出すと、500円玉は真実の手に渡る前にカウンターに落ちた。
静かな中に、硬貨の跳ねる音はやたらに大きい。
しばらく二人は、無言で500円玉を見詰めた。
「あ…ごめんなさい」
しばらくして動いたのは真実で、500円玉を取る指先を南部は無言で見つめる。
真実の手は、見間違いでなければ震えていた。
「大丈夫…?」
お釣りを手渡してくる真実に尋ねると、真実は一瞬きょとんとした顔をして、「何がですか?」と笑顔になった。
南部は何も言えなくなって、ビニール袋を持つ。
「じゃ」
軽く会釈して背中を向け、店を出ようとした時、後ろから声がかかった。
「古谷には…言わないで下さい」思わず振り返る。
真実はどこか泣きそうな顔をしていた。
その表情で出かかった言葉が出なくなる。