ポケットの恋
「よし君、最近真実ちゃんとどう?」
いつものように大学から帰る道で、そう幸日が切り出した。
何を聞かれたのか一瞬わからなくて、しばらくきょとんとしてしまう。
「どうって…べつになんも?」
結局、出てきた言葉は、当たり障りのないそれだった。
「なんも?だって…あ、じゃあよし君は、真実ちゃんのことどう思ってるの?」
「どう思ってるか以前に、俺真実ちゃんに嫌われちゃったかもしんないからさ」
古谷が自嘲的に言ったのとは逆に、今度は幸日がきょとんとなる番だったらしい。
目をなんどもぱちぱちさせた後、不思議そうに言った。
「でも、真実ちやんはよし君のこと好きだとおもうよ」
今度こそ、古谷は息を止めて固まる。話を逸らすことも考えたが、幸日がこんな不躾なことを言うからには何かある筈だ。
その直感が、会話を続けることを促した。