ポケットの恋
自分の名前を出されて秋田が反応するようなことが、何かあっただろうか。
まさかあの三人がまた…
その思考は幸日の次の言葉で思い切り四散した。
「よし君と真実ちゃん…昔はこういう感じじゃなかったよね?5年生位の時からじゃなかった…?今みたいな…」
「そうだったっけ?」
やっと発音できた時には、幸日の言葉は殆ど完結してしまった。
気づかれていないとは思っていなかったが、幸日がとびきり不服そうな顔になる。
「真実ちゃんもなんもないっていつも言う。秘密にしときたいなら聞かないけど…二人がわざと仲悪くしてるみたいで嫌だな。仲良くしたほうが楽しいのに」
幸日のセリフはある意味浅はかで、無神経だ。
だが、的を得ていた。
二人して、あの時のことは腫れ物のように扱っている。
自分が真実のことに本気なら、まずそこを解決しないと行けないことは、古谷はもちろんわかっているのに関わらず、だ。
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