ポケットの恋

「秋田…ねぇ…真実ちゃん?」
幸日が出て行ってから、ずっとこの調子だ。
聞こえていない筈は無いのに、真実は微動だにせず、返事も無い。
「うーん…」
古谷は苦笑いして頭を掻いた。
しばらく考えていたが、やがて溜め息をついて真実の横に座った。
真実はびくっとしたが、それでも意地があるのか、動こうとはしない。
古谷は少し寂しそうに笑って口を開いた。
「ねぇ秋田。秋田が泣かなくなったのってさ、俺のせいだよね?」
尋ねるというよりも、念を押すのに近い口調。
「違う」
即答は、肯定しているも同じだった。
「ごめんね」
ずっと口にできなかった言葉は、案外簡単に滑り落ちた。
だが、真実に届いたかは定かではない。
真実は古谷と、目を合わせようともしなかった。
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