ポケットの恋
「そう?まぁ幼なじみだし」
古谷の言葉は、適当にはぐらかしているようにも聞こえた。
聞かれたくないのか、それとも本当になにもないのか。
どちらにしろ、もう踏み込むのはやめだ。
「そう」
「あ、南部お礼決まったの?」
古谷がさりげなく話題を変えた。「……」
「元気に妄想しろよ!じゃあな!」
返事をしあぐねていると、もうすっかり元通りの声で、古谷は捨て台詞を吐く。
「はぁっ?!」
気付いた時には、電話は切れていた。
「…なんなんだ…」
呆然と呟き、携帯をベッドへ放る。
「どうするかなぁ、お礼…」
小さく呟いた声は天井に吸い込まれていった。
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