ポケットの恋
「…俺も好き。幸日ちゃんが好き」
そう言ってもう一度幸日を抱きしめた。幸日は腕の中でまた真っ赤になる。
「でも、見られてないからいいかな」
緊張のとけたせいかもしれない。
小さな声で転げ出た独り言はうっかり南部の耳に入ったらしい。
「じゃあ見せて」
おどけた調子で言って南部が幸日の顔を覗き込んでくる。
「真っ赤だ」
からかうように言われて幸日はばっとかぉを背けた。
「やっ…めてください」
少しむくれたように言ったのに、南部はそれでも嬉しいそうな顔をしている。
「な…南部さんむっつりでしょ!」
「かもね。嫌い?」
「きっ…嫌いじゃないけど…!なんか変!南部さんなんかいきなり変わりません!?」
照れ隠しで突っ掛かると、南部は嬉しそうに笑った。
「いいんでしょ、彼氏だと思って」
空を噛まされたのは幸日の方だ。
しばらく口をパクパクさせて、幸日はやっとのことで頷いた。
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