ポケットの恋
その真実の素直さに幸日は目をしばたかせる。
思わずわだかまりも忘れて声をあげた。
「あれ…二人仲直りしたの?なんかずっと前から険悪な感じで…」真実がはっとして固まる。
「そんなんよりさー。俺は戸田が秋仁を見る視線とか、秋仁がぽろっと漏らした呼び捨てとかの方が気になるんだけどなぁ」
ひょいと真実の横から飛び出した古谷の声に、今度は幸日が固まった。
「ああ…」
バツが悪そうな顔をして、南部はうなじを何度かこする。
「まぁ、なーんとなくわかるんだけど」
古谷がにやにやしながら手を延ばして南部をつついた。
「君達あれでしょ。なんか良い感じにおさまったわけでしよ。いやー罪な男だねぇ、秋仁」
南部は難しい顔をしたまま、コーヒーをすする。
「別に、報告することでもないんだが…」
「うん。なあに?」
「キモいぞおまえ!」
語尾にハートをつけた古谷に、南部は眉根を寄せた。
「話そらさないでよ」
古谷はするりと言ってのける。
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