ポケットの恋
どうやらはぐらかそうとしたのはばれていたらしかった。
こうなったら一気に言ってしまった方がいいだろう。
どのみち隠し通せるとは思っていなかったし、そんな気もない。
「俺達付き合うことにしたから」
その反応は三者三様。
古谷は一瞬でにやけ、幸日は俯き、真実は「げ」と喉の奥から声を捻り出した。
「真実ちゃん…何それ」
幸日が怒ったような顔になる。
「だって幸日が………」
そう言ったきり、真実は不機嫌な顔で無言になった。
「真実ちゃん、なに?」
「別に。おめでと」
真実は不満そうにそっぽを向く。幸日もむっとして真実の肩を叩いた。
「何ってば」
真実はふん、と鼻を鳴らせて大袈裟に頭を振った。
「…そりゃぁーそうよねー!彼氏がいればあたしなんていなくてよかったよねー!別にいいけどー」
< 333 / 341 >

この作品をシェア

pagetop