ポケットの恋
こどもビールがあるからという理由で宴会場になった南部のアパートの部屋は、それから異常に賑わった。
最後には、こどもビールの甘さに耐え切れなくなった真実が買ってきた、ノンアルコールビールで酔っ払ったように全員ではっちゃけた。
ようやく落ち着いたのは、日付が変わった頃になって、真実と幸日が疲れきって寝てしまってからだ。
「お前にしたら、珍しかったよな」
眠ってしまった幸日と真実に毛布をかけながら、南部がぼそりとつぶやいた。
「なにが?」
古谷が余ったビールを口に運びながら眉をあげる。
「秋田さん。いつものお前なら、人間関係なんか器用にこなすのにな、小憎らしく。だけど秋田さんとのわだかまりみたいなのは、いつまでもズルズル引きずって」
「秋仁だって一緒じゃん。恋愛関係はなんでもそつなくこなすのに。戸田に対してだけじゃない?あんなに一生懸命恋愛してたの」
ビールのカンを弄びながら古谷がやに下がる。
南部は珍しくしれっとした顔で「まぁな」と流した。
「つまんない反応だね。彼氏の余裕か、にくいね!」
「はぐらかすなよ」
南部が苦笑気味に言う。
古谷は観念したように、素直に笑った。
「秋田は別。もともと、わだかまりの原因作ったのは不器用なガキの頃だったし。素直な秋田にひどいこと言ったの俺だし」