ポケットの恋
「…お願いします…」
不本意だ。不本意過ぎるくらい不本意だ。
でも、古谷は相談相手にたしかに適していた。
「はいはーい」
にこやかに答える古谷に若干不安になったが、仕方がないので口を開く。
「お礼してもらうなら何がいいか、考えてんだけど…」
「うん」
「…どう、思う?」
そこで古谷はにぃっと笑った。
「秋仁、恋?」
「がっ…!まだからかうか!この期に及んでまだやるか!」
もういい、と立ち上がろうとしたら、古谷が慌てたように止めた。「ちがうって。お前が本気かどうかによって内容変わるだろ!…まぁ、今の反応でだいたいわかったけど」
質問な意味を聞いて、余計に動揺した。
何を取り乱したんだ!俺は!
一体いくつだ。中二男子か!
「悪い…」
内心突っ込みながら椅子に座り直す。
「秋仁ってあれでしょ。女の子から告られて付き合うタイプでしょ。しかも一回断ったのに、好きな人いないならためしに付き合ってって言われて。でも結局あわなくて終わり」
思わず黙ってしまったのは、古谷の言った事がほとんど図星だったからだ。
「どう?」
「…全部が全部そういうんじゃないが…ほとんどそうだ」
やっぱり、と古谷は笑った。
< 35 / 341 >

この作品をシェア

pagetop