ポケットの恋
「秋仁は、顔も良いし体も良いし頭も良いし、ジェントルマンだし。気に入られるのわかると思うよ。まぁ、俺が女だったら好みじゃないけど」
「なんだそれ…」
「それで、戸田に関する気持ちはこうだ」
核心をつかれてドキッとする。
「今まで付き合ってきた女の子達にもそれなりに気持ちは出来たけど、戸田に対してはそれと全然違う気がする」
古谷がにやりと笑ったのを見て、南部は大きくため息をついた。
完璧だ。何だこいつ、エスパーか。
「あたり…?」
「…あぁ」
渋々声を出す。
「で、お礼でどこまで踏み込んでいいのか、と」
それまで完璧だ。
「俺の考えでは、戸田もおまえに興味あると思う。下手すりゃ両想い」
「はっ…?!」
思わず引いた肘が、後ろの壁にぶちあたる。
「なぁにテンパってんの。秋仁がこういう風になるのって初めてだよねぇ」
古谷が楽しげに目を細めた。
「…悪かったな!余裕なくて!」からかわれたような気がして噛み付くように返すと、古谷は何も無かったように次の言葉を続けた。「俺なら、家族だしに使うかな」
「家族…?」
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