ポケットの恋
「お客様、店員の不手際で不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした、お怪我はございませんか?」
「…ぁ大丈夫です…」
店員はならよかったと言うように微笑んだ。
落ち着いて見てみると本当に良い男だった。
整っている容貌は、芸能人だと言われても納得する。
ふーんこういう人現実にいるのね等と思いつつ幸日を見ると、真っ赤になっていた。
あまり耐性のない幸日だし、そもそもあんな男に間近で微笑まれたら誰だってああなるだろう。
とりあえず無事な幸日にほっとする。
「そちらのお客様も大丈夫でしたか?」
気がついたらぼーっとしていたらしい。
件の良い男が自分の目の前にいた。
「あ、あぁ…大丈夫です」
可愛いげない返事を返すと幸日がいきなり抱き着いてきた。
「まみちゃーん!ごめんねごめんね!」
「だっ…いじょうぶだから!離れなってば!」
「ぅうぅ…」
「はっ?何あんた泣いてるの?欝陶しい!」
「だって…真実ちゃん無事だったんだも…真実ちゃん…ありがと」
「お…えあ…あたしなまはげだし!」
思わず意味不明な返事を返した時、「秋田?」と急に名字で呼ばれた。
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