ポケットの恋

「どこでバイトしてんの？言ったら離してくれよう。ん？」
「何様だ！あ゛あ…大通りの方のカフェ！」
「カフェ…」
「もういいでしょ！離して！」
「ああごめんごめん」
素直に離してやると真実は思い切り睨みつけてつきた。
「なによ」
「なによじゃない馬鹿！」
「馬鹿っていう方が馬鹿なんだよーっ」
「ふざけんなくたばれっ」
相変わらず、真実は律儀に古谷のからかいに答えてくる。
そういうとこ昔と全然変わらないなと古谷は思った。
どんな時でも、真実はいつも古谷の後をついて来ていた。
そうだ、変わらないのに。
いざ久しぶりに再会してみれば、いっちょ前の女になっていて驚いた。
もうお兄さんではなくなったなと、少し残念になったくらいだ。
「秋田さぁ」
「なに」
まだ真実は古谷を睨み続けている。
「なんで今の大学選んだの」
目に見えて、真実は怪訝な顔になった。
「そんなの興味のある学部があって、レベルがあってたからに決まってんでしょ」
「本当に？」
「は？」
「俺がいたからじゃないの？」
怒鳴られるだろうなと思った。