ポケットの恋
ビールの入ったレジ袋を床に置いて、南部は携帯を取り出した。
受信ボックスを開く。
数日前に受け取った、幸日からのメールを見返した。
交わしたのはほんの数通だが。
古谷には言いそびれたが、"お礼"の日は約一週間後に迫っている。
女の子との約束をこんなに意識するのは初めてだった。
いつも誘われる側だったせいかもしれない。
「古谷に言わなかったのは正解だったかもな…」
南部は小さく呟いた。
古谷のことだから南部達が出掛ける所に先回りして「ありゃー奇遇だねぇ」等と言いかねない。
うっかりすれば、次田にまで情報が回るかもしれない。
そうなったらもうアウトだ。
それにしても、今日の古谷は変だった。
古谷は古谷なりに色々あるのだろうが。
やはりビールは次田の部屋の前に置くか、と考えて南部は寝る準備を始めた。
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