ポケットの恋
「…どうしたの幸日、急に…」
「え…あ!」
幸日が隣の方を見て大声をあげた。
つられて同じ方を見る。
そこに、1番会いたくない人間が立っていた。
「あれれ。知ってる顔だ」
後から来た方の店員がまのぬけた声をだす。
あたしも知ってる。
なんでこのタイミングで奴に会うんだ。
「よ…よし君だよね」
幸日が控えめに店員に尋ねた。
「古谷、知り合いか?」
顔が整った方の定員がさらに尋ねる。
このままずっと尋ねあってればいいのに、と思っていたが、期待むなしく彼は口を開いた。
「そういう君はゆきひちゃん」
「そう!じゃあやっぱりよし君だ!ねね!まみちゃんよし君だよ」あたしにふるな!
慌てて背を向けようとしたが、バッチリ目があった。
しかたがない。
もう逃げられない。
「そうだね…ゆきひ。こいつは間違いなく、古谷良行だ」
苦虫をかみつぶしたように答えを返す。
案の定だった。
古谷良行は世界一憎らしい笑みを浮かべ、いきなり頭を掻き交ぜてきた。
「大きくなったね!真実ちゃん!色んな意味で!」
「馬鹿でしょあんた!くたばれ!なんかすごい事になったりならなかったりしてくたばれ!」
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