ポケットの恋
しどろもどろだ。
いくらお礼だからといって、これでは困るだろうか。
幸日をちらりとうかがうと、真剣な顔で考え込んでいた。
その表情だけで、他人の姉のことを真剣に考えてくれていることが伝わってくる。
「例えば…」
気づかない内に見つめてしまっていたらしい。
幸日の声で我に帰った。
「アクセサリーとかぬいぐるみとか文房具とか…あと本とか!その中だったらどういうのがいいですか?」
どうやら南部の怪しい振る舞いはは気づかれていないらしい。
とりあえずほっとして、質問に答える。
「アクセサリーかな…細々した雑貨とか好きそう。」
「あ!じゃあいいとこあります!」
そう言って幸日は満面の笑みを浮かべた。


その店は、花時計公園から少し歩いたところにあった。
見るからにかわいらしい店だ。
「こんなお店、確かに男の人一人じゃ入れませんね」
幸日はまた下から覗き込むようにして言った。
この身長差では当たり前なのだが、その度に心臓が跳ね上がって仕方がない。
「確かに。ありがとう、付き合ってくれて」
「そんな。お礼ですから」
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