ポケットの恋
「いやいや…秋仁の顔と戸田の性格だったらたいしたことじゃないから、それ。中学生の恋じゃないんだからさぁ」
「だーっもううるさい!!おまえはなんであそこのカフェにいたわけ!?」
ヤケクソで怒鳴る。
不意にまだ笑ったままだった古谷の表情が陰った。
やばい、まずいこと言ったか?
黙り込んだ古谷になんと言っていいか迷っている内に、古谷が口を開いた。
「あのさあ秋仁…俺って、戸田のこと好きそうに見える?」
「…は?」
思わず固まって古谷を見ると、至って真剣な表情をしている。
どっちかって言うと秋田さんのこと好きそうに見えるけど。
その言葉は飲み込んだ。
「なんだよ急に…誰かに言われたりしたわけ?」
変わりに尋ねると、古谷はふーっと息を吐き出した。
「うん。まあ」
「それって、秋田さん?」
そろりと探りを入れてみる。
古谷は、案外あっさり首肯した。
「そう…なんだ」
言ってから沈黙が流れる。
「でも!誤解だろ!?」
耐え切れなくなって言うと「当たり前だろ。」
呆れたように返された。
「秋仁にだってわかるのにね。なんでだろうなぁ、あの馬鹿は…」
< 66 / 341 >

この作品をシェア

pagetop