ポケットの恋
計りかねていると、いきなり目の前に古谷の顔が迫ってきた。
「なっ…んだおまえ!!」
驚いて後ろにのけ反り、バランスを崩す。
慌てて片手をつくと、古谷が人差し指を口の横に並べて微笑んだ。
「ていうかぁ、秋仁くん。人の恋愛詮索してる余裕あったら、その"ぴゅありー"なじゅにあはいすくぅるらぶを進展させる努力をしなさい?」
そのまま人差し指で鼻をつかれる。動転して後退し、今度こそバランスを失った。
気付いた時には古谷に押し倒されたような形になっていた。
「あらやだ。卑猥。」
そう言って小首を傾げる。
「馬鹿かおまえ!!」
古谷を押すようにして思い切り立ち上がった。
「おまえキモいぞまじでキモいぞほんとにキモいぞ!!」
まくし立てるように言う。
「ああ、ごめんごめん。」
古谷は間抜けた声でそう言った後、一呼吸置いて噴き出した。
「なんだおまえ!笑うとこじゃない…っつか笑い過ぎ!」
南部が怒鳴った後も、古谷はまだ笑い転げている。
「何がそんなに面白いっ」
「何って…秋仁が」
「埋めるぞお前!!」
「そいでさー、ぴゅありーなじゅにぁはいすくぅるらぶはどうなの?次の約束は取り付けた?」
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