ポケットの恋
「ど…どうしたのまみちゃん…よし君は?」
「その名前口にしない!!」
噛み付くような剣幕で言う。
「じゃあ、本当にありがとうございました」
“よし君”でない方の店員に深々と頭を下げると真実は幸日の腕を掴んでボックスを出ようとした。その戸口をあいつに塞がれる。
「あんまりなんじゃない?もう少し話そうよ久しぶりなんだし。」そう言って首を傾げる。
その動作が妙に似合っていることが、更に鼻についた。
「そうだよ!真実ちゃん!よし君に会うのすーっごい久しぶりなんだよ?」
「秋仁!おまえも戸田と話したいんだろ?」
「は?!おまえ何言ってんだ!」
秋仁と呼ばれた店員が慌てたように噛み付いた。
「あんね、あたしら客。あんたは店員!お客様は神様なの!客が帰るって言ってんだから大人しく帰しなさいよ!」
真実も突っ掛かったが、ことごとく無視される。
「秋仁、こちら真実ちゃん。秋田真実ちゃんね。で、こっちの子が戸田幸日ちゃん」
突然紹介されて、幸日は慌てて、はじめましてと頭を下げた。
「二人とも幼なじみでさぁ、ちっさい時は三人で仲良く遊んだよね」
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