ポケットの恋
真実はひそひそ声のみならず女を放棄した表情で古谷を見つめた。
「幸日…あそこに人間じゃないなんかがいる。」
「え…ぇあ…真実ちゃん顔酷い!!」
幸日が化け物を見たような顔をしてのけ反った。
そこでまた真実の怒りが爆発しそうになった所で、人間じゃないなんかがシーッと指を立てた。
「戸田。とりあえず南部の看病してくれない?俺と秋田は目に見えない感じになっとくから」
は!?と怒鳴りかけた真実に耳打ちする。
「南部と戸田にうまく行ってほしくないわけ!?」
「…んぐっ…」
真実は変な音を立てて停止すると、急に社長のように頷いた。
「うむ。幸日、看病してくるがよい。」
殿様かもしれない。
「…ぇ!?」
「じゃ、秋田行くよ」
幸日の潤んだ瞳を無視して、古谷が真実の手を掴んだ。
「ちょっ…キモい古谷!!」
「おだまりなさいな」
幸日が泣き出しそうなのをよそに、古谷と真実は何やらぎゃーぎゃー言いながらたちあがった。
「戸田、そこのビニール袋の中、必要そうなもの買っておいたから、適当につかって」
古谷はそう言い残すと、真実の手を引いて、そのまま玄関口に消えた。
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