ポケットの恋
「わ…っ」
この熱だったら相当に苦しいはずだ。思わず漏れた声は止められなかった。
昨日はちゃんと元気そうだったのに。無理をさせたのかと不安になった。
「昨日は普通に体調よかったから。あれ関係ない。だれかのせいにするなら、多分古谷が妥当だし」
心を見透かされたような言葉に、心臓がはねた。
「お粥っ…作ります」
そんなの、この場から逃げる口実だ。
古谷の言っていたビニール袋を手に取って台所へ向かう。
丁度壁で南部からは見えなくなる位置で、幸日はへたり込んだ。
「…よし君が変なことするからぁ…」
こんな変な風になっちゃったんだ。続きの言葉は心の中だけで呟く。
「そういえば…真実ちゃん達どうしてるんだろう…」



「うまくいくかなああの二人!」真実は古谷のにやにや顔を見上げて溜息をついた。
「…野次馬根性剥き出しなんだけど」
そう言われている間も古谷はジャングルジムを登っていく。
二人は南部のくアパートの公園に来ていた。
「いいじゃん!秋田は戸田と秋仁にうまくいって欲しくないわけ?!」古谷はそこで頂上に到達して、思いっ切り伸びをした。
< 77 / 341 >

この作品をシェア

pagetop