ポケットの恋
取りあえず慰めてみても、南部に立ち直る気配はない。
「戸田もさぁ、あれはシャイだから。別に秋仁のこと嫌ってないって」
「…おもいっきり笑われた方がましなんだけど」
「笑えないでしょ、秋仁戸田に本気なんだから」
古谷はそう言うとベッドに腰掛けた。
「とりあえずこれで中学生は卒業したじゃんね?」
「…むしろ後退した気がする…」
「そんなことないから。じゃあメールでも送っとけば?考えるだけでもしてもらえないかって」
「あぁっ!!」
南部はそうかと言うように声をあげて携帯に手を伸ばす。
けれどすぐに動きを止めた。
「なんか…しつこくないか?何か送るならむしろ熱でどうかしてた系の…」
言い淀む南部を古谷は睨んで言う。
「お前戸田とどうなりたいわけ?」
「……恋人」
「じゃあはい」
古谷は携帯を南部に手渡した。



「…やっと出た」
幸日のマンションの部屋の前で、真実が電話をかけたのは、扉の向こうにいる幸日だ。
なんどチャイムを鳴らしてもでないので痺れを切らして電話をした。
真実は、長いコール音の後やっと出た幸日に、声を荒げそうになるのをギリギリで抑えた。
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