ポケットの恋
「何やってんの」
「真実ちゃぁん…だって…」
「だいたい事情はわかるけど……告られた?」
電話口で、小さく息を飲む音が聞こえた。
「逃げたんなら、南部さん困ってんじゃないの?連絡来なかった?」
「……メール来た」
「なんだって?」
「見てない」
「は?」
真実の声が心底訳がわからないという様子だったのだろう。
「だってぇ…」
電話の向こうで泣きそうな声を出す。
「ていうかさっきからチャイム押してるのあたしなんだけど。出てくれないの?」
幸日は沈黙した。
その空気で諦めが着く。
「気持ち落ち着いて相談したくなったりしたらいいなさいよ」
「真実ちゃん…」
「でも帰るには一つ条件ね」
「ぇ…」
「南部さんのメール読んどきなさい」
電話の向こうからは応えはない。
真実は何も言わず携帯を切った。
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