ポケットの恋
「幸日も何考えてんだか…」
真実は小さく息を吐いた。
「あれか。俺が散々、秋仁からかったからかなぁ」
「あんたに反省の気持ちがあったのね」
ここぞとばかりにシラけた目をした真実を、古谷はさらりと流した。
「南部もだけど、戸田の方が問題じゃない?なんでそんなんになっちゃってんの?告られたくらいで、そんなに動揺するか?普通」
「知らないけど…。幸日は昔から結構告白とかされてるけど、ちゃんと片付けられてたよ」
じゃあ、と古谷は続けた。
「南部だったからってこと?」
「じゃないのー?」
古谷は、でもなぁと頬杖を着く。
「わっかんないんだよなあ。好きなら好きって言えばだし、嫌いなら嫌いって言えばだし」
「幸日自身もわかんないのかも。自分が今南部さんのことどう思ってるのか」
真実が答えると、カウンター席の向こうから店長が手招きしているのが見えた。
その口は早く来てと言っている。「あ、ごめんあたし行くわ」
「ん」
古谷は頷くと、少し温くなったコーヒーを飲み干した。
「真実ちゃん、おかわりね」
「……かしこまりました」
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