ポケットの恋
その日のバイトが終わったのは7時だった。
古谷は結局、真実があがるまでお替わり自由のコーヒーで粘ったのだから呆れる。
「お疲れ」
カウンターから、着替えを済ませて出てきた真実に、古谷はにこやかに言った。
「あんた…何が面白くてこんな時間まで」
「だって真実ちゃんと帰りたかったしぃー書かなきゃいけないレポートもあったし」
「それでコーヒーお替わりする度に呼び付けられたあたしの身にもなってほしいわ」
「まぁまぁ」
古谷は笑顔を崩さない。
真実が店から出ると、当然のようにその隣に並んだ。
真実は古谷を一瞥して歩き出す。「俺考えたんだけどー」
急に古谷は鞄をごそごそやり出した。
「これ!」
そう言って真実の手に握らせる。「え?何これ」
「遊園地のチケット」
「それはわかるけど…」
古谷は、思わず立ち止まってしまった真実の肩を叩いて言う。
「ダブルデート!約束したじゃん、前」
「あ、あぁ…」
それで公園でのやりとりを思い出したらしい。
「でも今あの二人ケンカっぽくなってるでしょ?」
真実の言葉に、古谷は甘いなあと首を振った。
「だからでしょ?仲直りの為ってこと」
「そういうこと…」
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