ポケットの恋
さっきの真実とは比べ物にならない位一気に言う。
急に元気になっちゃって、と苦笑しながら内心古谷の行動力に舌を巻く。
どうやってとったんだあいつは。
「真実ちゃん?」
頭で色々考えていたら幸日のことを忘れていた。
「あ、あぁ。なんかバイトの先輩がくれた」
それらしい嘘を言っておく。
「そっかぁ」
幸日はにっこり笑って、チケットに目を戻した。
嬉しそうな顔で、チケットをもてあそんでいる。
「いつ行く?真実ちゃん」
「え?あー…」
しまった。決めていなかった。
多分古谷ならいつにしても都合はつけるだろうが、適当に決めておじゃんになってもことだ。
「まだ……まだバイトのシフトどうなるかわからないから、後で連絡する」
出まかせはうまくいったようで、幸日は笑って頷いた。
「で?」
うまくいったのをいいことに、話を変える。
今一番聞きたかったのはもちろん別の話だ。
「で…って?」
「わかってんでしょ!南部さん!」
途端に幸日は真っ赤になった。
「メールは?見た?」
「見た…」
消え入りそうな声で言う。
「返事は?したの?」
「し……し、てない」
ますます消え入りそうな声で言う。
「はぁっ?!」
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