夜  話  
「………嬉しかったんだ。」


俯いたまま皎は言いました。


「あのふたりの神様の事は、ずっとみんなが気に掛けていた事だった。
それだけに、明日からの事を考えるとただ嬉しいだけじゃない気がしてきていたんだ。」


それだけ言うと、鎖骨の上にひんやりとした口づけを残し。


吹き抜けた風と共に。


皎の姿はまた。


消えてしまっていたのでした。



「お前の強さに救われたよ。」



そんな呟きが聞こえてきたような気がするのは、何故なのでしょう。


惜しみなく降り注ぐ黄金色の月の光は、答えを教えてくれる事もなく、ただ、豊かに静かに、全てを照らしだしているだけなのでした。


     時雨月  了
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