夜  話  
言外に、感謝しろよという言葉を山ほど散りばめて。


不遜な態度でそう言い放つ彼は。


見知ったいつもの。


皎、でした。


変わらない美貌を月の光にさらし、その闇色の豊かな髪に風をまとわりつかせて、彼は今夜もわたしの窓辺へと現れてくれたのでした。


「冷えたりしないわよ?」


わたしは防寒の為のふかふかの靴下や、あたたかい羊の毛織りのスカート等を思い浮かべながらそう反論しました。


「ふ。
何を着てるかじゃない。
おまえが、今の自分の身体の状態にあった体温でいるかどうかってことだよ。」
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